高原などの景色がいい所を、風を感じながら走り抜ける気持ち良さは、バイクの醍醐味です。
バイクに乗り始めた頃は早いスピードで走りたい気持ちが強かったですが、徐々に、安全に気持ちよく走る方法を考えながら走るようになりました。
動体視力も瞬発力も若い頃をピークに落ちていきますが、これまでに習得した安全で楽しい山道の走り方を、今一度ライン取りを中心にまとめて、これからも事故や怪我なくバイクを楽しむ決意をしたいと思います。
自分と同じように、「早く」ではなく「安全に楽しく」山道などを走りたいと考えているライダーの方にも参考にしていただけると嬉しいです。
道路を横断する歩行者や自転車
最初に、歩行者や自転車などの、交通事故の観点での交通弱者についてです。
道路を横断しようとしている歩行者や自転車、そして自分の安全が確保できる状況であれば、相手を優先することを心がけます。
例えば、数珠つなぎ状態で漫然と走っている直線路で、後方車両が車間距離を詰めてきていることがあります。
そのような場合は、横断者優先のために強めのブレーキをかけると、その場所全体の危険度が増してしまいます。
道路を横断しようとする人の発見に遅れた場合は、むやみに止まらずに、例えば人がいる方とは反対側に少し寄りつつ通過することで、後方車両が早く気づいて停止できるような環境づくりだけをしておきます。
これ以降は、単独や対車両 (トラック、車、バイクなどを「車両」と総表して書きます) の安全について記述していきますが、常に最優先で大前提なのは、交通弱者のまわりで、自分(バイク)による危険度を高めない事です。
直線路(ストレート)
定常走行時の基本
今さらですが基本中の基本は、前方車両が急にとまった場合に自分も止まれる車間距離をとります。
基本は中央線寄り
片側1車線のストレートを単独走行する時は、とっさの場合の回避パターンが少しでも多くなるラインを選びます。
まわりに民家があるか等の状況によって変わりますが、たいていの場合は車線中央から少しだけ道路の中央線に寄って走ります。
後方の危険は無くしておく
流れに乗っていても、ミラーも使って全方向を定期的にチェックします。
後方から追い越しをかけてきそうな車両がいれば、前方との車間距離を多めにしつつ、少し道路の左に寄って、「貴方の接近には気付いているので、お急ぎなら抜いてもいいですよ」という雰囲気を出してみます。
それでも相手に抜く意図がないと判断できれば、その車両が後ろにいる間は、前と横の安全チェックに重点をおけるので、楽に走り続けることができます。
危険から遠ざかるためのライン取り
対向車の右折
バイクに限らず直線路でおこる事故の一つが、直進車両と対向する右折車両の、右直事故です。
先ほど基本は中央線寄りとしたのは、対向車両から自分(バイク)の存在を認識されやすくする意図もあります。
自分の左側に観光施設の入り口があるなど、対向車両の右折が考えられる場所では、普段よりもさらに中央線寄りを走行して、前車の急減速&左折があった場合の逃げ道を確保しつつ、対向車両が自分に気づかずに右折してくるリスクも減らします。
左からの合流や通過、飛び出し
次に左側からの飛び出しについてです。
自分の周りの危険度を上げないために、前車との微妙な車間距離を作らないように注意します。
左側から出てくる車両のために十分なスペースを作っておくか、進入を諦める車間距離のどちらかにしておくと、左からの無理な合流や通過を避けることができます。
前車との安全が確保できる車間距離で走っていても、無理な合流や通過が考えられる場所では、さらに車間距離をとって、先を譲ってしまうくらいの気持ちで、自車周りの危険度を高めないようにします。
連続コーナー路(ワインディング)
山間部などでは、コーナーが連続する道を通ることがあります。私のように、そのような道を好んで走るライダーも多いと思います。
コーナー路を、前方車両に追従して走る場合は、直線路のライン取りと同じなので、ここでは単独走行状態での安全なライン取りについて考えていきます。
自分のペースで走れることが、安全で楽しいライディングにつながるので、後方から速いペースの車両が来たら、自分だけでなく相手の安全の為にも、進路を譲って先に行ってもらいます。
基本の走り方
ライン取りの前にコーナーの走り方ですが、よく聞くスローイン・ファーストアウトの意義について、今一度考えてみます。
バイクは直線でもコーナーでも、軽く駆動力がかかっている状態が安定しています。コーナー中に軽く加速しながら安定させ続けるためには、出口までオーバーランしないスピードで通過できるように、進入時にはスピードを落としておくことが必要です。
後輪にしっかり荷重(トラクション)がかかっている事も大事なので、コーナー中は後輪に意識して、傾いている後輪にかける(軽い)駆動力で進行方向が変わっていく事を感じながら向きを変えます。登坂路のタイトコーナーでは、無意識でもほぼこの状態になっています。
バイク自体の操舵力で向きを変えるセルフステア状態にするため、ハンドルは操舵力を加えないフリー状態です。
ハンドルをこじって曲がるクセがついている場合、いきなりセルフステアを全面活用する事ばかり考えると、ギクシャクしてしまい逆に危険なので、徐々に実践していって、安定状態でコーナーを走り抜けることを目指します。
軽くかけておく駆動力ですが、進入直後と出口での立ち上がり時を除き、コーナー中はなるべく変化の少ない一定駆動力で、ライン取りできるようにします。
これらを実践する為に、出口まで安定して駆動力をかけ続けられるスピードを、コーナー進入前に作っておく、スローイン・ファーストアウトが必要です。
見通しのいいコーナーのライン取り
コーナーの入り口から出口まで安全が確認できている場合についてです。路肩に歩行者や自転車がいたり、道路横に民家がある場合は、危険な思いをさせないように、そこから離れたラインを通るので、除外します。
コーナー全貌がわかっているので、出口でコーナー内側を通れるように、アウト → センター → インのラインをねらいます。
常に道路のコーナーより早めにバイクの向きが変わっている状態になるので、マンホールなどの予想外のことがあっても、余裕を持ってラインを変えることができます。
出口が見えないコーナーのライン取り
路側が壁のようになっている左コーナーなど、どこまでコーナーが続くかがわからず、またコーナー半径が同じになっているかもわからない場合です。
まず、コーナー進入前までに確認できる一番奥の部分をコーナー出口だとして、入口はアウト、仮定した出口でインを通るライン(下の図の黒色太線)を通過できるスピードを作っておきます。
コーナー進入後に、予想よりもコーナーが長かったり深かったりしたら、そこから出口でイン側を通るラインに変えて通過します。
入口ではわからなかった奥側が相当タイトになっている場合の除き、入口で計画していたラインよりも外側を通るラインへの切り替えなので、修正しやすくなります。
コーナー途中での減速
これまで纏めてきたライン取りは、できれば避けたいのですが、コーナー中にブレーキをやむを得ず使うことになった場合にも、対応しやすいライン取りです。
車線を逸脱せずに、一瞬だけ直線的に進みつつブレーキングして、クイックに方向を変えるためのスペースを確保しやすいラインです。
バイクでコーナーを走る時のオーバーラン は、スピードが出すぎていたか、パニックで直線的に進むしかなくなった場合が考えられます。
最初に紹介したスローイン・ファーストアウトと、コーナーのライン取りに加えて、ここで紹介したコーナー中の車線内ブレーキング&クイック方向転換ができると、安全にコーナーを走り抜けられる技の幅が広がり、何かあってもパニックにならずに、冷静に対処できる確率が高まります。
最後に
これまでに、公道ではありませんがバイクで骨折し、半年から一年ほどバイクに乗れないことが数回ありました。
思い返すと、完治するまでの間は、大変つまらない生活を強いられていました。
これからは、今回まとめた事を忘れずに、事故をしないだけでなくケガもしないように注意して、いつまでもバイク乗りでいられるようにしたいと思います。